基礎知識・有機栽培

自然栽培と有機栽培の違いとは?慣行栽培・特別栽培とあわせて比較

「自然栽培」「有機栽培(オーガニック)」「特別栽培」「慣行栽培」。野菜やお米を選ぶときによく目にする言葉ですが、それぞれ何が違うのかをきちんと説明するのは意外と難しいものです。ここでは「肥料と農薬をどう使うか」と「国のルールがあるか」の二つに分けて、四つの違いを並べてみます。

Summary

  • 自然栽培は、一般に農薬も肥料(化学肥料・有機肥料・堆肥)も使わない栽培方法。ただし法律上の定義や公的な認証はありません。
  • 有機栽培は、化学的に合成された肥料や農薬を使わないことを基本とし、有機JASという国の規格があります。堆肥などの有機肥料や、認められた農薬は使えます。
  • 特別栽培は、化学合成農薬と化学肥料(窒素成分)を地域の慣行レベルの5割以下に減らしたもの。
  • どれが「一番よい」というより、何を大切にして育てたかを知って選ぶのがおすすめです。

4つの栽培方法をひと目で比較

まずは全体像です。細かな例外はありますが、代表的な違いを表にまとめました。

慣行栽培特別栽培有機栽培自然栽培
化学合成農薬使う(基準内)慣行の5割以下原則使わない使わない
化学肥料使う窒素成分を慣行の5割以下使わない使わない
有機肥料・堆肥使うこともある使うこともある使う(土づくりの基本)使わない(※考え方に幅あり)
国のルール農薬取締法などの一般的な規制農林水産省の表示ガイドライン有機JAS規格(認証制度)定義・認証なし
表示特になし「特別栽培農産物」有機JASマークがあるものだけ「有機」「オーガニック」と表示可能生産者ごとの説明による

※自然栽培の「肥料を使わない」の範囲は生産者によって異なります。詳しくは後述します。

慣行栽培とは:いま一般的な農業のかたち

慣行栽培(かんこうさいばい)とは、その地域で一般的に行われている栽培方法のことです。化学肥料で作物に必要な養分を効率よく与え、国に登録された農薬を定められた使用基準の範囲で使って、病気や害虫、雑草を防ぎます。

安定した収量と品質、見た目のそろった作物を、多くの人に手ごろな価格で届けられるのが大きな役割です。スーパーに並ぶ野菜の多くは慣行栽培で育てられています。「慣行栽培=悪い」ということではなく、ほかの栽培方法を比べるときの基準になるものだと考えるとわかりやすいでしょう。

特別栽培とは:農薬と化学肥料を「半分以下」に

「特別栽培」は、国のガイドラインにもとづく表示の区分です。その地域で一般的に使われている量(慣行レベル)と比べて、

  • 節減対象となる農薬の使用回数が5割以下
  • 化学肥料の窒素成分量が5割以下

という条件を満たしたものです。どの農薬をいつ何回使ったかなどを表示することになっており、「減らした量」が具体的にわかるのが特徴です。

有機栽培(オーガニック)とは:国の規格「有機JAS」がある

有機栽培は、堆肥などで土を肥やし、自然の循環を生かして作物を育てる方法です。自然栽培との大きな違いは、国の規格「有機JAS」があり、第三者のチェックを受ける仕組みがあることです。田畑を切り替えてから一定の期間をおくことや、使える資材が決められていることなど、細かな基準を満たした生産者だけが有機JASマークを付けられます。

転換期間の年数や表示のルールなど、認証の中身は有機JASマークと「無農薬」表示のルールで詳しく取り上げています。

自然栽培とは:農薬も肥料も使わない

自然栽培は、農薬も肥料も使わず、植物がもともと持っている力と、土や微生物、草や虫などの生きものの働きを生かして作物を育てる栽培方法です。有機栽培との一番大きな違いは、堆肥や有機肥料も基本的に使わない点です。

肥料を使わずに作物が育つ仕組みについては、肥料なしで作物が育つのはなぜ?で解説しています。

「自然栽培」には法律上の定義がない

自然栽培には有機JASのような国の規格や認証がありません。そのため、同じ「自然栽培」という言葉でも、生産者によって実践の内容に幅があります。たとえば、当サイトに掲載している農家さんの表記を見ても、次のような違いがあります。

  • 化学肥料も有機肥料も堆肥も、一切の肥料を使わない(「無肥料」「無施肥」と明記)
  • 化学肥料と動物性の堆肥は使わないが、草や落ち葉、刈り取った稲わらなどは田畑に還す
  • 緑肥(すき込むために育てる植物)を取り入れる
  • 農薬は使わないが、農薬以外の資材(マルチなど)の使い方は人それぞれ

こうした違いがあるため、農家さんの紹介ページでは言葉を統一せず、ご本人が使っている表現を残しています。気になる点は販売ページの説明を読んだり、直接たずねたりしてみてください。

自然農法・自然農との関係

自然栽培とよく似た言葉に「自然農法」や「自然農」があります。これらは提唱者や考え方の違いによって呼び名が分かれてきたもので、耕すかどうか、草をどう扱うかなどに違いがあります。歴史的な流れは自然栽培・自然農法・自然農の違いと歴史にまとめています。

結局どれを選べばいい?

栽培方法は、それぞれに目的と役割があります。「どれが一番よい」と決めるより、次のような観点で自分に合うものを選ぶのがおすすめです。

農薬の使用をできるだけ避けたい

有機JASマーク付きの農産物、または農薬を使わないことを明記している自然栽培の農産物が選択肢になります。

第三者の認証で安心したい

国の検査を経た有機JASマークがわかりやすい目印です。自然栽培には公的な認証がないため、生産者の説明を読んで判断することになります。

つくり手の考え方に共感して買いたい

自然栽培の農家さんの多くは、畑の様子や考え方を発信しています。直販で買って感想を伝えるのも楽しみのひとつです。

価格や手に入れやすさも大切

自然栽培は収量が少なくなりやすく、価格は高めになりがちです。特別栽培や慣行栽培と上手に組み合わせるのも現実的な方法です。

味や栄養価は「栽培方法だけでは決まらない」

「自然栽培の野菜は味が濃い」「栄養価が高い」といった声を聞くことがありますが、味や栄養価は品種、土、気候、収穫時期、鮮度などさまざまな要因で変わります。栽培方法の違いだけで味や栄養価の優劣が決まるという、一貫した科学的な結論は出ていません。

だからこそ、実際に食べてみて「この農家さんのにんじんが好き」と感じる体験を大切にしたいところです。

自然栽培の作物を選ぶときのチェックポイント

  1. 何を使っていないかが具体的に書かれているか:「農薬・化学肥料・有機肥料を使用しない」など、範囲がわかる説明があると安心です。
  2. いつから、どのくらいの面積で続けているか:栽培の経緯を公開している農家さんも多くいます。
  3. 種へのこだわり:固定種・在来種を使っているか、自家採種しているかなど(固定種・在来種・F1種の違い)。
  4. 問い合わせに答えてくれるか:直販の良さは、つくり手に質問できることです。

購入方法については自然栽培の野菜・お米の買い方ガイドも参考にしてください。

よくある質問

自然栽培の野菜には有機JASマークが付いていますか?

多くの場合、付いていません。有機JASマークは認証を受けた場合にのみ表示できるため、自然栽培の農家さんでも認証を取得していなければマークは付かず、「有機」「オーガニック」とも表示できません。一方で、自然栽培を実践しながら有機JAS認証を取得している生産者もいます。

自然栽培なら虫食いがあるのが普通ですか?

農薬を使わないため、虫食いの跡が残ることはあります。ただし、自然栽培の実践者の中には、土や作物の状態が安定すると虫の被害が気にならなくなると話す人もいます。季節や作物によっても異なります。

自然栽培と無農薬栽培は同じですか?

「無農薬栽培」は農薬を使わないことだけを指すため、肥料は使っている場合があります。自然栽培は一般に肥料も使わない点で異なります。なお、「無農薬」という表示はガイドラインで禁止表示とされており、現在は「農薬:栽培期間中不使用」などと表示されます。

違いを振り返る

慣行栽培・特別栽培・有機栽培・自然栽培の違いは、肥料と農薬をどう使うか、そして国のルールや認証があるかどうかにあります。自然栽培は公的な定義がないぶん、つくり手の言葉を知ることが大切です。

当サイトでは、全国の自然栽培の農家さんを都道府県別に紹介しています。お住まいの地域や、気になる土地の農家さんを探してみてください。

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