温泉の基礎知識
温泉分析書の読み方 — 泉質名・泉温・pH・浸透圧の見方
温泉の脱衣所には、温泉法にもとづいて「温泉分析書」や温泉の成分・禁忌症・入浴上の注意の掲示があります。少し難しく見えますが、いくつかの決まりを知っておくと、そのお湯がどんな温泉なのかを読み取れるようになります。
温泉分析書に書かれている主な項目
- 源泉名・湧出地:どの源泉のお湯か。同じ温泉地でも源泉ごとに分析書があります。
- 泉温:源泉から採取したときの温度。浴槽の温度とは違います。
- 知覚的試験:色・におい・味など、見た目や感覚でわかる性質。
- pH値:お湯の酸性・アルカリ性の度合い。
- 成分の表:陽イオン(ナトリウム、カルシウムなど)と陰イオン(塩化物イオン、炭酸水素イオン、硫酸イオンなど)の量。「mg」と「ミリバル%」が並んで書かれています。
- 成分の総計・泉質:溶けている成分の合計と、そこから決まる泉質名。
- 分析年月日・分析機関:いつ、どこが分析したか。温泉法により、温泉の成分は定期的に分析し直すことになっています。
泉質名の読み方
泉質名は「陽イオン-陰イオン泉」の形で書かれます。たとえば「ナトリウム-塩化物泉」は、陽イオンではナトリウム、陰イオンでは塩化物イオンが主な成分という意味です。成分表の「ミリバル%」が20%以上の成分を多い順に並べるため、「ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉」のように長くなることもあります。
溶けている成分の量が少ない場合(1kgあたり1,000mg未満)で、源泉の温度が25℃以上のものは「単純温泉」です。さらに、硫黄や鉄、二酸化炭素などの特別な成分が一定量以上あると、「含硫黄-」「含鉄-」のように名前の前に付いたり、「硫黄泉」「二酸化炭素泉」などの泉質名になったりします。
療養泉の基準になる成分
泉質名や適応症の掲示の対象になる「療養泉」は、源泉の温度が25℃以上か、温泉水1kgに次のどれかが基準以上含まれているものです。
| 成分(温泉水1kgあたり) | 療養泉の基準 | 関係する泉質 |
|---|---|---|
| 溶存物質の総量(ガス性のものを除く) | 1,000mg以上 | 塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉など |
| 遊離二酸化炭素 | 1,000mg以上 | 二酸化炭素泉 |
| 総鉄イオン | 20mg以上 | 含鉄泉 |
| 水素イオン | 1mg以上 | 酸性泉 |
| よう化物イオン | 10mg以上 | 含よう素泉 |
| 総硫黄 | 2mg以上 | 硫黄泉 |
| ラドン | 30(100億分の1キュリー単位)以上 | 放射能泉 |
泉温・液性・浸透圧の区分
温泉分析書の泉質名の後ろには、「(低張性 弱アルカリ性 高温泉)」のように、3つの性質が添えられていることがあります。
| 分け方 | 区分 |
|---|---|
| 泉温(源泉の温度) | 冷鉱泉:25℃未満 / 低温泉:25℃以上34℃未満 / 温泉:34℃以上42℃未満 / 高温泉:42℃以上 |
| 液性(pH) | 酸性:pH3未満 / 弱酸性:pH3以上6未満 / 中性:pH6以上7.5未満 / 弱アルカリ性:pH7.5以上8.5未満 / アルカリ性:pH8.5以上 |
| 浸透圧(溶存物質の総量) | 低張性:8g/kg未満 / 等張性:8g/kg以上10g/kg未満 / 高張性:10g/kg以上 |
浸透圧は、体液との濃さの違いを表します。高張性のお湯は成分が濃く、体に成分が入りやすいといわれる一方、湯あたりしやすいともいわれます。アルカリ性のお湯は、肌がすべすべした感触になることが多く、「美肌の湯」と紹介される温泉にもよく見られます。
分析書を読むときの注意
- 分析書は源泉の性質です。浴槽では加水・加温・循環ろ過・消毒が行われていることがあり、その内容も掲示されています。
- 同じ温泉地でも源泉が違えば泉質も違います。温泉図鑑の泉質は、温泉地を代表する源泉の例です。
- 泉質ごとの適応症(効能)は、適応症(効能)の見方で紹介しています。
出典:環境省の温泉法関係の基準、千葉県衛生研究所 公開講座「千葉県の温泉水のはなし」、広島市「温泉の成分等の掲示」資料など。数値の区分は鉱泉分析法指針にもとづく一般的なものです。